令和3年1月度 教会長のお話

 令和3年1月号「佼成」の会長先生の「ご法話」を拝読させていただき、文末に感じたことを書かせていただきます。

 今月は、『常不軽菩薩のように』というテーマを、

○合掌・礼拝の精神を体現する、○「常不軽菩薩品」と「雨ニモマケズ」

の2段落でご解説いただいた。

 まず、『合掌・礼拝の精神を体現する』の段落では、

 新年、明けましておめでとうございます。

本年もまた「善(よ)いこと」を繰り返し行なって、お互いさま美しく豊かな一年にしていきたいものです。そこで、あらためて「善いこと」とは何かについて考えてみましょう。

 今年「降誕(ごうたん)八百年」をお迎えになる日蓮聖人(にちれんしょうにん)は、「仏教の肝心は法華経で、法華経の修行を説いたのは不軽品(ふきょうぼん)である。そのなかで、不軽菩薩が人を敬(うやま)われたのはどういう理由からかをよくよく考えてみなさい。釈尊の本懐(ほんかい)(本来の願い)は、人の道――行動や態度を教えることにあったということである」(崇峻天皇御書(すしゅんてんのうごしょ))といっておられます。

 そうすると「常不軽菩薩品(じょうふきょうぼさっぽん)」には、仏の教えを習学する私たちにとって生き方の基本となる、日常生活における「善いこと」が示されていると受けとめてよさそうです。

 常不軽菩薩は、みなさんご存じのとおり、出会う人のだれに対しても合掌・礼拝(がっしょう・らいはい)、「私はあなた方を敬います。決して軽んじません。あなた方は、菩薩の道を行じて必ず仏になる方々だからです」といって賛嘆しました。しかも、そのことによってどんなにひどい仕打ちを受けても、人を見下げたり、怒りや憎しみを抱いたりしないで耐え忍び、罵声(ばせい)や暴力から身を遠ざけながら礼拝行に徹したのです。

 「常不軽菩薩品」では、仏性(ぶっしょう)の自覚と菩薩行の実践を中心とする教えが説かれ、その合掌・礼拝の姿勢は仏教を信仰する者のお手本といえます。ただ、よくよく常不軽菩薩のありようを見てみると、合掌や礼拝の「かたち」にとらわれることなく、経文にある「但礼拝(ただらいはい)を行ず」の一語にこめられた精神をかみしめ、味わい、血肉として行動すること、それが、おのずと「善いこと」につながると思うのです。

 『「常不軽菩薩品」と「雨ニモマケズ」』の段落では

 当たり前のことですが、私たちは太陽や水や空気がなければ生きていけません。大きくとらえれば、そうしたものへの感謝は、私たちとって大切な礼拝行です。天気に文句をいわないのも礼拝の一つであり、水を大切に使い、ものを無駄にしないというのも合掌の一つのかたちでしょう。人に不平不満や愚痴をこぼさないのも、悪口や怒りをぶつけないのも合掌・礼拝の実践ですし、それは相手の仏性を信じて敬う、人間としてのつとめともいえます。

 つまり、身近な行動や態度や言葉の一つ一つが、どれも合掌・礼拝を身であらわす行だということです。そして、そのことをとおして、私たちは自分の仏性を自覚し、また相手にも、みずからの仏性を自覚せしめているのです。

 童話作家として知られる宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」の一節「ミンナニデクノボーウトヨバレ/ホメラレモセズ/クニモサレズ/サウイフモノニ/ワタシハナリタイ」は、常不軽菩薩の影響を受けた賢治の願いと生き方をあらわしているといわれます。そのようなことから、この詩をあらためて「常不軽菩薩品」に重ねる気持ちで読んでみたところ、私はこれまで以上に感銘を受けました。なぜかといえば、この詩は、法華経の信仰に生きた賢治の言葉でやさしく翻訳された「常不軽菩薩品」そのもので、法華経に縁のない人が読んでも、常不軽菩薩のような生き方――菩薩としての行動や態度が、よくわかると感じたからです。

 「慾(よく)ハナク/決シテ瞋(いか)ラズ」はいわずもがなですが、「アラユルコトヲ/ジブンヲカンジョウニ入レズニ」は「まず人さま」の姿勢を示し、「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」は、人間の力ではどうすることもできない苦難と向きあう人にそっと寄り添う、慈悲(じひ)の祈りにほかなりません。

 みなさんも何かの機会にぜひ、この詩をじっくりと味わってみてはいかがでしょう。

 と、締めくくられた。

 年頭にあたり、今年の修行精進の心構えをいただきました。ご本仏のおはからいで、今月号は、ちょうど年頭のご法話にあたり、そのご解説が、「常不軽菩薩品」ということが意義深く思います。

 ご法話の冒頭、修行の三要素(授記品)「善いことを、心をこめて、繰り返す」をお示しいただき、「善いこと」とは、出会う人の「仏性」を礼拝することとお示しいただきました。

 このご指導は、昭和20年のご神示にある会の行法観が、私たちの基本的な行法観であることを再確認することと受けとめ、今年の修行目標として、身近な行動や態度や言葉の一つひとつを戒め、しっかり精進させて頂くことを誓願させていただきましょう。                                                 

合掌
立正佼成会 姫路教会
たかとし
教会長 吉 田 高 聡